野営国語研究所

生きるための言葉の学び

ジャンルを演じる、あるいはダンスウィズミー

 2019年8月16日、「ダンスウィズミー」という映画が公開されるようです。「ウォーターボーイズ」「スウィングガールズ」などで知られる矢口史靖監督が原作・脚本・監督を務めます。

http://wwws.warnerbros.co.jp/dancewithme/

 突然歌って踊るミュージカルの「お決まり」を馬鹿にする主人公が、まさしく突然歌って踊ってしまう、いわば「ミュージカル病」にかかる映画。これまでの作品同様、「ひねり」の効いた設定です。
 矢口作品の「ひねり」は、「お決まり」を逆手に取ることです。〈男子〉のシンクロや〈田舎娘〉のジャズなど、社会的な通念を付き崩すところに痛快なドラマがあります。そこに社会批評を見出すこともできるでしょう。
 これらの作品は、次のようなステップを踏んでいます。①確認:あるジャンルの「お決まり」を示す。②逸脱:その「お決まり」から外れた主人公を過剰に描く。③更新:「お決まり」を乗り越えたり作り変えたりして、自分なりの表現を成し遂げる。
 作品で描かれるのは、主人公の成長だけではありません。それぞれの作品のテーマとなるジャンル(シンクロやジャズ、そしてミュージカル)もまた、成長(更新)しているのです。
 シンクロを通じて主人公は成長し、主人公によってシンクロの常識が更新される。そのような協同関係を認めることができます。事実、「ウォーターボーイズ」を銘打った水泳部のシンクロが、全国の学校で見受けられます。
 さて、今回の提案は「ジャンルを演じる」ことです。そのねらいは、矢口作品のようにジャンルの常識を更新すること。……とは少々言い過ぎかもしれませんが、上に示したステップの①と②までは至りたいと考えています。
 小説や俳句といった文学ジャンルには、それぞれの「お決まり」があります。結論からいえば、その「お決まり」を過剰に表現することで、ジャンル観を際立たせる活動を想定しています。その具体例については、稿を改めます。

所信表明

 教員になっても研究の視点を持ち続けることができるように、このブログを開設しました。授業のアイデアをはじめ、疑問や雑感を綴っていこうと思います。

 「国語」と銘打っていますが、むしろ一見すると「国語」からこぼれ、はみだすような事柄から、国語教育ひいては言葉の学びを捉えたいと考えています。

 多少理屈っぽいところがあるかもしれませんが、できるだけ等身大の考えを記していきます。まだまだ学ぶことばかりです。どうぞよろしくお願いいたします。